急性灰白髄炎(読み)キュウセイカイハクズイエン(英語表記)Acute anterior poliomyelitis

デジタル大辞泉 「急性灰白髄炎」の意味・読み・例文・類語

きゅうせい‐かいはくずいえん〔キフセイクワイハクズイエン〕【急性灰白髄炎】

感染症予防法の2類感染症の一。ポリオウイルスが経口的に感染し、中枢神経の主として脊髄せきずい灰白質をおかす病気。小児に多く、かぜに似た症状のあと、手足の麻痺まひが生じる。日本では予防に生ワクチンが用いられたが、平成24年(2012)以降、ウイルスを不活化させたIPVというワクチンが用いられ、現在では発症はまれ。ポリオ脊髄性小児麻痺

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精選版 日本国語大辞典 「急性灰白髄炎」の意味・読み・例文・類語

きゅうせい‐かいはくずいえんキフセイクヮイハクズイエン【急性灰白髄炎】

  1. 〘 名詞 〙 脊髄灰白質を主とする中枢神経細胞がポリオウイルスにおかされる伝染性疾患。発熱頭痛嘔吐などの症状のあと、手足が麻痺する。幼児に多い。感染症法では二類感染症に分類される。ポリオ。脊髄性小児麻痺。小児麻痺。ハイネ‐メディン病。

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家庭医学館 「急性灰白髄炎」の解説

きゅうせいかいはくずいえんぽりお【急性灰白髄炎(ポリオ) Poliomyelitis Anterior Acuta】

[どんな病気か]
 ポリオウイルスが感染して、脊髄(せきずい)の灰白質(かいはくしつ)という部分をおかすため、数日間かぜをひいたような症状が現われたのち、急に足や腕がまひして動かなくなる病気です。
 夏から秋にかけて、日本では幼児がかかりやすいのですが、1961年から予防接種が行なわれるようになって以来、発病数が激減し、現在ではまれな病気になりました。
 しかし、海外旅行から帰った人に、ポリオウイルスの保有者がときどき見つかるので、油断はできません。
[症状]
 潜伏期は1~2週間です。発病初期は、熱が出て頭や背中が痛み、汗が出て、だるく、嘔吐(おうと)や下痢(げり)をすることがあるなど、夏かぜに似た症状になります。
 このような症状が1~4日続いて熱が下がるころ、足や腕に力が入らなくなってまひしてきます。重症の場合は、胸の筋肉や横隔膜(おうかくまく)までまひし、ときには呼吸中枢(こきゅうちゅうすう)のある延髄(えんずい)までウイルスにおかされ、呼吸ができなくなって、死亡することもあります。
 しかし、こうなるのはごく少数で、たいていは、かぜのような症状だけで、まひはおこらずに治ります。
 さらに、なんの症状も現われず、本人も知らないうちに免疫ができて治ってしまう不顕性感染(ふけんせいかんせん)が95%を占めています。
[治療]
 感染症予防法で2類感染症に指定されています。
 病原ウイルスに効く薬はないので、寝て安静を保つことがたいせつです。背骨が痛ければ、温湿布(おんしっぷ)や鎮痛薬(ちんつうやく)を用い、呼吸困難が生じたら、レスピレーター(人工呼吸器)を用います。まひが生じたら、マッサージ、電気療法、運動療法などのリハビリテーションで回復をはかります。
[予防]
 おもな感染源は、糞便(ふんべん)中にいるウイルスですが、のどにいるウイルスも感染源になります。したがって、病人は入院して治療し、糞便、鼻やのどの分泌物(ぶんぴつぶつ)で汚染されたものは消毒します。
 予防にもっとも効果があるのは予防接種(予防接種とはの「予防接種の種類」)です。

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六訂版 家庭医学大全科 「急性灰白髄炎」の解説

急性灰白髄炎(ポリオ)
きゅうせいかいはくずいえん(ポリオ)
Acute anterior poliomyelitis
(子どもの病気)

どんな病気か

 脊髄(せきずい)の運動神経細胞(前角(ぜんかく)細胞)が破壊されて左右非対称性の麻痺を残す病気です。現在では世界中の一部の地域を除いてポリオワクチンによる抑制に成功し、まれにワクチンの副作用としてのポリオ様麻痺の報告があるだけです。

原因は何か

 ポリオウイルスによる感染症です。経口感染し、潜伏期間は3~21日(多くは1~2週間)です。

症状の現れ方

 感染者の90%以上が無症状に経過し、数%に発熱、感冒様(かんぼうよう)症状、下痢、無菌性髄膜炎(ずいまくえん)が発症します。症状が現れた人の5人に1人程度、とくに年長児や成人で解熱の前後に麻痺が現れます。麻痺は片側の下肢に多く、筋肉も萎縮(いしゅく)してきます。

診断と治療の方法

 ウイルス検査と抗体検査で診断します。

 有効な治療薬はなく、ワクチンによる予防が必要です。現行の生ワクチンは前記のように麻痺を起こすことがあるので、不活化ワクチンが検討されています。

脇口 宏

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「急性灰白髄炎」の意味・わかりやすい解説

急性灰白髄炎
きゅうせいかいはくずいえん
acute anterior poliomyelitis

脊髄性小児麻痺,ポリオ。ポリオウイルス (3つの型がある) による急性感染症で,主として保菌者の糞便中に排泄されたウイルスが経口感染する。伝染力が強く,家族が感染した場合,15歳以下の小児は 100%感染する。感染の様式には,不顕性感染,軽症,非麻痺性,麻痺性の4型がある。 90~95%は不顕性感染か軽症であるが,麻痺性になると重大である。麻痺性ポリオでは,脊髄の灰白質に炎症を起し,その結果,種々の筋肉の不全麻痺や完全麻痺が起きる。予防には生ワクチンの経口投与が行われ,90~100%に有効な免疫が得られる。日本では現在まったく発生していない。

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百科事典マイペディア 「急性灰白髄炎」の意味・わかりやすい解説

急性灰白髄炎【きゅうせいかいはくずいえん】

ポリオ

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栄養・生化学辞典 「急性灰白髄炎」の解説

急性灰白髄炎

 →ポリオ

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世界大百科事典(旧版)内の急性灰白髄炎の言及

【ポリオ】より

…届出伝染病の一つで,急性灰白髄炎ともいい,かつては小児麻痺と称した。ポリオウイルスによる感染症で,下肢や上肢の永久的な麻痺を起こす疾患として恐れられた。…

※「急性灰白髄炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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